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三浦 隆智; 工藤 淳也; 小山 大輔; 大部 智行; 佐本 寛孝
Proceedings of 12th International Conference on Nuclear Criticality Safety (ICNC2023) (Internet), 10 Pages, 2023/10
東海再処理施設では、1977年から2007年までに、商業用発電炉(BWR,PWR)や新型転換炉ふげん等の使用済燃料を約1,140トン再処理した。廃止措置に移行した2018年から、リスク低減のため施設に保有する高放射性廃液(HALW)のガラス固化処理を最優先に取り組んできている。使用済燃料の再処理に伴い発生したHALWには、核分裂生成物(FP)等に加え、極微量のウランやプルトニウムを含む不溶解性残渣(スラッジ)が存在している。通常時ではHALW中のU, Puの濃度が非常に低いため、HALWが臨界に至ることは考え難い。また、事故時にHALWの冷却機能が喪失し、蒸発乾固に至る過程を考慮した場合においても、中性子吸収効果の高いFPが共存しているため、HALWが臨界に至ることは考え難い。これらを定量的に確認するために、HALWの蒸発によりU, Pu濃度が上昇し、乾固に至るまでの過程における臨界安全評価を実施した。本評価では、HALWを溶液系とスラッジ系、それぞれ無限体系モデルで、U, Pu, FPの存在比を分析データやORIGEN計算結果に基づき保守的に設定し、蒸発乾固に伴う溶液の濃縮による濃度変化に対して、無限増倍率を計算し、臨界未満の状態が維持されることを確認した。また、溶液系,スラッジ系の両系を考慮した2層の無限平板モデルでも、未臨界状態が維持されることを確認した。これにより、東海再処理施設においては、高放射性廃液の蒸発乾固の過程における臨界は想定されないことを確認した。
吉田 一雄; 玉置 等史; 桧山 美奈*
JAEA-Research 2023-001, 26 Pages, 2023/05
再処理施設の過酷事故の一つである高レベル放射性廃液貯槽の冷却機能喪失による蒸発乾固事故では、沸騰により廃液貯槽から発生する硝酸-水混合蒸気とともにルテニウム(Ru)の揮発性の化学種が放出される。このためリスク評価の観点からは、Ruの定量的な放出量の評価が重要な課題である。再処理施設のリスク評価の精度向上に資するため、計算プログラムを用いて当該事故時でのソースタームを解析的に評価する手法の整備を進めている。提案する解析手法では、まず廃液貯槽の沸騰をSHAWEDで模擬する。模擬結果の蒸気発生量等を境界条件としてMELCORにより施設内の蒸気等の流れに沿って各区画内の熱流動状態を模擬する。さらに各区画内の熱流動状態を境界条件としてSCHERNを用いてRuを含む硝酸、NO等の化学挙動を模擬し、施設外への放射性物質の移行量(ソースターム)を求める。本報では、仮想の実規模施設での当該事故を想定して、これら3つの計算プログラム間でのデータの授受を含めて解析事例を示す。
堀田 拓摩; 山岸 功; 永石 隆二; 柏谷 龍之介*
JAEA-Technology 2021-012, 34 Pages, 2021/07
東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所における多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System; 以下「ALPS」という。)および増設多核種除去設備(Improved ALPS)の前処理設備から発生する炭酸塩沈殿物を主とする廃棄物(以下「炭酸塩スラリー」という。)は高性能容器(High Integrity Container; 以下「HIC」という。)に格納されている。このHIC内において、水の放射線分解により発生した水素ガスの炭酸塩スラリー内での保持および、それに伴う容積増加が原因と推定される上澄み水のHIC外部への漏えい事象(溢水)が発生した。この溢水の発生が確認された当時に保管されていた大部分のHICにおいて、外部への溢水は観察されていない。このことはHIC内炭酸塩スラリー自体の性状や気泡の保持特性の理解が溢水発生条件を明らかにする上で重要であることを示唆している。そこで本研究では、溢水したHIC内炭酸塩スラリーの組成を模擬した炭酸塩スラリーを作製し、その炭酸塩スラリーの非放射性条件下での性状および気泡の保持特性を明らかにすることを目的とした。まず、溢水が発生した炭酸塩スラリーの組成を模擬するために、溢水した炭酸塩スラリーが調製された当時のALPS運転条件を調査し、炭酸塩スラリーの主要元素であるマグネシウムとカルシウムの比率を変えた5つの原水を調製した。これら原水から炭酸塩等を沈殿させ、実機ALPSと同じクロスフローフィルタ方式を用いて模擬炭酸塩スラリーを作製した。次に、作製した炭酸塩スラリーの化学分析を実施した。また、沈降試験を実施して沈降層の密度(以下「沈降密度」という。)、降伏応力を測定した。最後に、沈降層への気泡注入試験を実施し、炭酸塩スラリー内部での気泡保持/放出特性について検討した。模擬炭酸塩スラリーは原水組成のカルシウム含有率が高いほど沈降密度が高くなることが分かった。そして、沈降密度が高い模擬炭酸塩スラリーでは沈降層の降伏応力が高く、注入した気泡を保持しやすい傾向が観察された。これらのことから、溢水したHIC内炭酸塩スラリーを模擬するためには原水組成に関する情報が重要であり、また、スラリー内での気泡の保持状況には炭酸塩スラリーの密度が影響を及ぼすことを明らかにした。
五十嵐 寛
JAEA-Review 2020-006, 261 Pages, 2020/09
本調査報告では、公開情報を対象に我が国の地層処分研究開発第2次取りまとめ(H12レポート)以降の諸外国の包括的性能評価報告書を中心として、ソースタームとしての核種溶出モデルにおけるガラス固化体の割れによる表面積増加比の設定値及びその根拠・背景の視点から調査した。また、海外の知見を参考に表面積増加に関する試験の日本の報告例に対する評価を試行した。調査文献から得られた知見に基づき、ガラス固化体の直径、ガラス固化体製造時の冷却条件、ガラス固化体への衝撃、地層処分場閉鎖後の水との接触等の環境条件等が、割れによる表面積増加比(又は割れ係数)に及ぼす影響について検討した。多くの国において、ガラス固化体の割れの要因はガラス固化体の製造, 輸送, 保管, 貯蔵など処分前管理の段階及び処分後の現象又は事象に起因するとされている。その影響は地層処分の性能評価における核種溶出モデルでも考慮されている。各国の核種溶出モデルにおける表面積増加比とその根拠等を概観し、各国の間の相違点及び共通点を整理するとともに、これまでに報告された表面積増加比の測定値と測定方法との関係及び測定方法の特性について考察した。また、各国の核種溶出モデルで設定されている表面積増加比の根拠としての表面積増加比の測定に用いられた測定方法を整理した。さらに、廃棄物管理工程の流れの中でのガラス固化体の割れによる表面積増加比に影響する要因、表面積増加比の特徴等の各工程との関わりを検討した。これらの調査及び検討により、性能評価における保守的かつ現実的な表面積増加比の適用に向けた知見を拡充し、我が国の地層処分のシステムのセーフティケースの作成・更新に資することができる。
山本 昌彦; Do, V. K.; 田口 茂郎; 久野 剛彦; 高村 禅*
Spectrochimica Acta, Part B, 155, p.134 - 140, 2019/05
被引用回数:5 パーセンタイル:41.46(Spectroscopy)本研究では、発光分光分析装置の小型化に有効な液体電極プラズマに着目し、これに基づく発光分光分析法(LEP-OES)によりテクネチウム(Tc)の発光スペクトルについて調査した。その結果、200-500nmの波長範囲において合計52本のピークを確認し、全てTcの中性原子線とイオン線に帰属された。最も発光強度の高いピークは、254.3nm, 261.0nm, 264.7nmで確認された。模擬試料を用いて、高放射性廃液中に共存する成分による分光干渉の影響を評価した結果、264.7nmのピークでは干渉なく測定できることがわかった。そこで、264.7nmのピークを用いて分析性能を評価した結果、検出限界値は1.9mg/L、Tc標準試料(12.0mg/L)の繰り返し測定時の相対標準偏差は3.8%(N=5, 1)であった。
Do, V. K.; 山本 昌彦; 田口 茂郎; 高村 禅*; 駿河谷 直樹; 久野 剛彦
Talanta, 183, p.283 - 289, 2018/06
被引用回数:10 パーセンタイル:39.09(Chemistry, Analytical)本件では、新規の分析法である液体電極プラズマ発光分光分析法による、高レベル放射性廃液中のCs元素濃度の分析技術を開発した。その結果、検出限界値及び定量下限値はそれぞれ0.005mg/L、0.02mg/Lであり、東海再処理施設から採取した高レベル放射性廃液の分析に適用し良好な結果が得られた。
山根 祐一; 天野 祐希; 田代 信介; 阿部 仁; 内山 軍蔵; 吉田 一雄; 石川 淳
Journal of Nuclear Science and Technology, 53(6), p.783 - 789, 2016/06
被引用回数:6 パーセンタイル:43.12(Nuclear Science & Technology)高レベル放射性廃液(HALW)から放出される放射性物質の放出挙動について、沸騰事故条件での実験研究を行った。実験室規模の再処理で得られたHALWを用いた実験で、Ru, Tc, Cs, Sr, Nd, Mo, RhなどのFP核種とCm及びAmなどのアクチニドの放出割合を測定した。結果として、Ruの放出割合は0.20、FP核種やアクチニドの放出割合は1であった。Ruは気相中にミスト及びガスとして放出された。Ruの放出量の、試料溶液中のRuの初期濃度に対する依存性は弱かった。FP核種とアクチニドは非揮発性で、気相中にミストとして放出された。その放出量は、試料溶液中の初期濃度が大きいほど多かった。Ruの放出割合とNOx濃度は試料溶液の温度の上昇に合わせて増加した。RuとNOxの多くは200から300Cの間の、互いにほぼ同じ温度において放出された。ミストその他の粒子状物質の粒径分布を測定したところ、150C以下と200C以上で、互いに異なった分布が得られた。
内山 軍蔵; 田代 信介; 天野 祐希; 阿部 仁; 山根 祐一; 吉田 一雄; 石川 淳
Proceedings of 21st International Conference & Exhibition; Nuclear Fuel Cycle for a Low-Carbon Future (GLOBAL 2015) (USB Flash Drive), p.1056 - 1063, 2015/09
再処理施設高レベル廃液の沸騰事故時における放射性物質の放出量評価データ取得に関する実験研究を行っている。本研究では、コールド基礎実験、コールド工学実験及びホット実験を行っている。これまでの実験の結果、高レベル模擬廃液の沸騰事故条件ではRu及びTcは揮発性を有し、ガス状及びミスト状で放出され、その他のFP元素は非揮発性であり、ミスト状で放出されることがわかった。高レベル摸擬廃液からの非揮発性FP元素の放出率は、10程度であった。Amなどのアクチニド元素の放出率は、非揮発性FP元素とほぼ同程度であった。
田代 信介; 内山 軍蔵; 天野 祐希; 阿部 仁; 山根 祐一; 吉田 一雄
Nuclear Technology, 190(2), p.207 - 213, 2015/05
被引用回数:8 パーセンタイル:51.03(Nuclear Science & Technology)沸騰事故条件下の高レベル濃縮廃液(HALW)からの放射性物質の放出挙動を調べた。非放射性物質からなる模擬HALWを用いた実験から、Ruは事故条件では揮発性化合物となり、ガスとミストの両方の状態で放出されることがわかった。また、沸騰条件下での模擬HALWからのRu放出速度と見かけのRuの揮発速度定数が得られた。一方、Csのような他のFP元素は不揮発であり、ミストの状態で放出されることがわかった。反応容器内の模擬HALWの表面近傍におけるミスト径分布を測定した結果、ミスト径の範囲は0.05から20mの範囲であり、約2mをピークとした分布であることがわかった。
Do, V. K.; 山本 昌彦; 田口 茂郎; 久野 剛彦; 駿河谷 直樹; 高村 禅*
no journal, ,
廃止措置の過程で発生する廃棄物の処分には、放射性元素の分析が必要不可欠である。現在、元素分析にはICP-AESが広く使用されているが、この方法は大容量電源やプラズマガスを必要とし、遮蔽セルやグローブボックス内においてメンテナンス作業等に課題がある。本件ではマイクロ流路内における放電で発生する液体電極プラズマ(LEP)に着目した。これは、導入ガスが不要で小電力でも発生可能であるため、装置を大幅に小型化することができる。さらに、発光分析の励起源として使用すれば、分析に関わる廃液発生量もLレベルにまで低減するができる。本件では、LEPを利用し、放射性物質分析のための超小型分析デバイスを開発した。本発表では、実施したCs、Srの分析結果を紹介する。
Do, V. K.; 山本 昌彦; 田口 茂郎; 稲田 聡; 高村 禅*; 久野 剛彦
no journal, ,
本研究では、高レベル放射性廃液中のCs, Tcを分析するため、液体電極プラズマを利用した発光分光分析法を検討した。各元素の発光強度に対する印加電圧、電圧印加時のシーケンス、硝酸濃度の影響を調査し、測定条件を最適化した。その後、当該法を東海再処理施設から採取した高レベル放射性廃液試料中のCs, Tcの分析に適用した。
Do, V. K.; 山本 昌彦; 田口 茂郎; 高村 禅*; 久野 剛彦
no journal, ,
本件では、高放射性廃液中のSrに関する新しい分析手法として、固相抽出濃縮と液体電極プラズマ発光分光分析法を組み合わせた方法を開発した。固相抽出カラムは、Srレジンを長さ30cmのチューブに詰めて製作した。このカラムは、10回繰り返して使用可能であり、試料中のSr濃度を15倍ほど濃縮することができた。この固相抽出による前濃縮とLEP-OESを組み合わせてSrを分析した結果、分析時間は1.5時間、試料量5mLで模擬HALW中のSrを良好に定量することができた。
Do, V. K.; 山本 昌彦; 田口 茂郎; 稲田 聡; 高村 禅*; 久野 剛彦
no journal, ,
液体電極プラズマ発光分光法(LEP-OES)による高放射性廃液(HALW)中のストロンチウムの分析法を開発した。LEP-OESの機器は、グローブボックス内に設置して使用した。印加電圧と試料の酸濃度等の測定条件を最適化し、模擬HALWの測定結果について、ICP-OESと比較して検証した。本発表では、これらの結果を述べるとともに、現在実施中の実試料の測定結果について報告する。
Do, V. K.; 山本 昌彦; 田口 茂郎*; 久野 剛彦; 佐藤 宗一; 高村 禅*
no journal, ,
金属元素分析には導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES)が主に適用される。しかし、ICP-OESは装置自体が大型かつ冷却システムやアルゴンガスを必要とする装置であること、グローブボックス(GB)の中に設置した場合、メンテナンス等が課題とされてきた。本研究では、プラズマガスや冷却が不要で、発光分析装置の小型化に有効な液体電極プラズマ(LEP)に着目し、LEPに基づく発光を分光分析するLEP発光分光法(LEP-OES)の高放射性液体廃棄物(HALW)への適用を検討した。本報ではLEP-OESの適用がHALW中のCs, Sr, Na, K, Tc等の元素定量に有効であることを確認した。